脳卒中を疑うサイン〜BE-FASTを見逃さない〜

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脳卒中の種類

脳卒中は,様々な要因により脳血管の病的状態が原因で起きる病気です.主に血管が「詰まる」,または「破れる」ことによって,脳の組織へ血液を送り届けることができなくなり,脳の神経細胞が損傷されてしまう病気です.
 

▶︎脳梗塞:脳の血管が詰まり,それ以降の組織に血液が供給されない病態.
 その原因を詳細に見ると,以下のように分かれます.

  • 脳血栓:動脈硬化などで狭くなり血流が滞りできた血の塊(血栓)によって,脳の血管が塞がれた病態です.細い血管の動脈硬化によるものをラクナ梗塞,太い血管の動脈硬化によるものをアテローム梗塞と言います.
  • 脳塞栓:心臓でできた血の塊(血栓)が脳の血管へ到達して,脳の血管を塞いだ病態です.
  • 一過性脳虚血発作:血栓による脳血管の詰まりが一時的に脳梗塞の症状が出現するが,再び血流が再開し症状が24時間以内に消失する病態です.今後,脳梗塞になる可能性が高い病態です.
     

▶︎脳出血:脳実質内の細い血管が破れて出血した病態.
 

▶︎くも膜下出血:脳を覆っている「くも膜」と「軟膜」の間において出血した病態.
血管の表面にできたコブ(脳動脈瘤)が破れることや血管の奇形などが原因となります.
 

結果として,体の不調が脳卒中発症サインとして現れてきます.

 

時間との勝負!Time Lost is Brain Lost!

「治療するまでの時間が失われるとと,脳の機能も失ってしまう!」.

10年以上前になりますが,上記のVTRのように,アメリカ脳卒中協会(American Stroke Association)が有名俳優さん達を起用して,脳卒中を疑った場合にはすぐに救急車へ電話をしましょう!という予防キャンペーンが行われていました.  

血管内の血栓を溶かしたり,カテーテルで回収するなどの新しい治療法が提案され運用されている今であっても,発症したら可能な限り早く対応することが,血液供給が行われず損傷されていく脳の範囲を最小限にとどめ,後遺症を最小限にすることに繋がることに変わりません.

 

脳卒中サインは,”F.A.S.T”で見極める

脳卒中を疑うサインとして,アメリカ脳卒中協会が提唱しているのは「F・A・S・T」です.確認する症状とその対処についての頭文字をとったもので,そして「FAST=迅速に」に対応をということです.

  • F(Face):
    顔に麻痺はないか?(目尻や口角が下がり上げられない,息が漏れて頬を膨らませられない,等)
  • A(Arm):
    腕に麻痺はないか?(腕を上に挙げたまま保てない,手に持ったものを落としてしまう,等)
  • S(Speech):
    口に症状はないか?(呂律がまわらない,話ができない,理解できない,)
  • T(Time):
    症状が出た,症状に気づいたのは何時か?   
     

よりこのサインを多くの人に知ってもらうためか, 2017年9月21日には,以下の動画にあるようにヤングマンの歌詞を変えた歌「F.A.S.T. Song」も発表していたりします.

Act F.A.S.T.

The beat will move your feet, and the words will get you ready to spot a stroke and take action. Watch and share our F.A.S.T. song, a parody of the 1970s hit Y.M.C.A. #StrokeMonth http://spr.ly/6185EiGDd

American Heart Association: You're the Cureさんの投稿 2019年5月10日金曜日

 
最近では以下のように #singFAST という活動もしているようです. 

 

FAST から BE-FAST へ

一部の教育プログラムに置いては,FACEに,バランス「B(Balance)」と眼の症状「E(Eye)」を追加した,”BE-FAST”というニーモニックが用いられていたりするようです.そこで,Aroorら(2017)  は,FASTでは捉えることができない症状が現れた急性虚血性の脳卒中患者の割合を明らかにして,歩行に関わる症状と,視覚症状を加えることによる検出率の変化を調査しています.
 

その結果,FAST単独では,急性脳卒中患者の14%を見逃してしまうことが分かり,歩行と視覚症状の既往歴(BE-FAST)を追加することで,見逃してしまう割合が4.4%にまで減少したことを報告しています.つまり,虚血性脳卒中の95%以上を捉えることができたということで,今後の研究により公的な教育プログラムが変わっていく可能性にも言及しています.
 

Reference:
Aroor S, Singh R, Goldstein LB. (2017) BE-FAST (Balance, Eyes, Face, Arm, Speech, Time) Reducing the proportion of strokes missed using the FAST mnemonic. Stroke 48:479-481. 

  

知識があれば対処できることがある!

脳は,場所によって役割が異なります.そのため,損傷される脳の部位によっては,FASTで挙げられた症状が全て出現するとは限りません.

FASTの他にも「半身に生じる顔,腕,足の脱力感や痺れ」「頭の整理がつかず,話すことや理解が困難」「片目,又は両目で見るのが難しい」「めまいやバランスの乱れにより歩くのが困難」「突然の原因がわからない重度の頭痛」などもありえます.いずれかの症状が当てはまったら,脳卒中を疑うくらいの感覚でいても良いと思います.

そして,もし脳卒中だと判断したら,救急車を呼びましょう!自分で車で運転して病院に行ったりすることは危険ですし,家族が運転するにしても時間がかってしまう場合があるからです.

親族や友人をはじめ,多くの方に「F A S T」,または「B E – F A S T」を知らせて,脳卒中の症状を早く判断し対処する輪を広げていきましょう.

Reference

Time Lost is Brain Lost (ASA/AHA)

 

<SPONSORED LINK>

 

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